Ⅰ.事業方針
長引くコロナ禍に加え、ロシアのウクライナ侵攻や急激な円安などを背景に肥料、飼料及び生産資材の高騰や食料安全保障などの問題に直面しており、農業の現場では、農業人口の減少と高齢化や遊休農地の拡大が続き、地域の農地が適切に利用されなくなることが懸念される中、農地の集積・集約化等に向けた取組を加速化することが喫緊の課題となっている。
また、国は、食料・農業・農村基本法の見直しについて、「基本法検証部会」を設置し、食料安全保障の強化等が議論され、令和6年通常国会を目途に改正に向けた検討が本格化している。
農業委員会組織については、昨年5月20日に成立した基盤法等の改正法が令和5年4月1日に施行され、①「人・農地プラン」が「地域計画」として法定化、②基盤法の「農用地利用集積計画」がバンク法の「農用地利用集積等促進計画」への統合、③地域計画における目標地図の素案作成等による地域の農地に対する機能と役割の強化、④多様な農業の担い手を地域の内外から取り込むために農地法第3条の「下限面積」要件の撤廃等が実施される。
そうした状況に対応するため、農業委員会に導入されたタブレット端末を活用し、農家の農地利用に関する意向把握や委員の活動記録の記帳等を行い、農地情報の適正管理と公表に利用する「農業委員会サポートシステム」のデータの最新化を行う必要がある。
さらに、引き続き、農業委員及び農地利用最適化推進委員の日常活動(農地の定期的な見回り、農地の出し手・受け手の意向の把握、把握した意向を踏まえた農地の斡旋等)を起点とした「新たな農地利用最適化」を強力に進め、農業委員会活動の見える化に取り組むことが重要である。
本県においては、令和5年度が新制度に移行して3回目の統一改選であり、10月には、南城市、沖縄市、うるま市、八重瀬町を除く、県下33市町村農業委員会が改選を迎える。特に、第5次男女共同参画基本計画(令和2年12月25日閣議決定)の成果目標である女性農業委員比率3割の早期達成に注力するとともに、女性農業委員が一人も登用されていない農業委員会の解消については必達を目指す必要がある。
これらのことを踏まえ、農業委員会ネットワーク機構では、県、農地バンク等の関係機関と連携を図りながら、農業委員会の巡回活動等で現場に応じた課題解決を図るよう取り組み、農業委員会の果たす役割、機能が十分発揮されるよう、農業委員会ネットワーク業務に関する規程に基づき、適正かつ着実な業務遂行を実現するため、次の諸支援対策に取り組む。
Ⅱ.農業委員会ネットワーク業務の実施
1.農業委員会相互の連絡調整及び農業委員会に対する支援業務
農業委員、農地利用最適化推進委員及び職員に対する講習及び研修会を開催する。
2.農地に関する情報の収集、整理及び提供業務
農業委員会サポートシステムを活用し、農地に関する情報を整理し、整理した情報を関係行政機関等、農地中間管理機構その他農林水産省令で定める者に提供する。
3.農業経営を営み、営もうとする者に対する支援業務
新規参入者又は新規参入予定する者が円滑に農業参入できるよう関係農業委員会との連絡調整を行う。
4.法人化の支援その他農業経営の合理化支援業務
法人化推進のための研修会及び現地指導及び農業者年金制度の理解促進、 普及推進のための研修会を開催する。
5.認定農業者等農業の担い手の組織化及び組織の運営支援業務
認定農業者や農業経営者の組織化を支援し、各経営者組織への運営支援を行う。
6.農業一般に関する調査及び情報の提供業務
農地価格や農作業料金などの基礎的な調査を行い、農業者及び農業委員会、 農地中間管理機構等の関係機関、農業者一般に関する農業者等への情報提供活動を行う。
7.農地法等その他の法令の規定により機構が行うとされた業務
農地等の転用許可に係る農業委員会からの意見聴取について、農業委員会及び県担当部局と密接な連携により適正かつ円滑に処理する。
8.関係行政機関等に対する意見の提出
農地等の利用最適化の推進に関する施策の改善について、農業委員会等の意見を集約し農業・農村の問題を幅広く汲み上げ、関係行政機関等に意見を提出する。
Ⅲ.事業内容
1.農地利用最適化の一層の推進と農業委員会サポートシステムの活用促進
(1)機構集積支援事業
2.農地利用の最適化の推進に向けた組織体制の整備及び活動の強化
(1)組織体制対策
3.農政対策及び調査活動
(1)沖縄県農業委員会ネットワーク機構として、組織機能と役割を十分果たせるよう意見の提出や要請活動等の実施
(2)集落座談会及び「農業者等との意見交換会」や農業委員会の日常的な活動等を通じた農業者からの意見集約による要請活動の実施
(3)「農業者等との意見交換会」の定着に向けた農業委員会への支援
(4)食農教育の推進と食の安全・安心の確保対策への対応
(5)さとうきび等農畜産物の生産・経営安定対策への対応
(6)TPP(環太平洋連携協定)、WTO・FTA・EPA農業交渉への対応
(7)農業金融及び農業関連税制改正対策ならびに農林・農業委員会関係予算確 保対策への対応
(8)農業委員会法第43条第1項第6号に基づき、構造政策推進の基礎資料として「田畑売買価格に関する調査」「農業労賃、農作業料金に関する調査」の調査を実施
4.担い手・経営対策、新規就農・人材対策の推進
(1)農の雇用事業
(2)雇用就農資金
(3)農業者年金事業
(4)沖縄県経営構造対策推進事業
(5)日本農業技術検定事業
5.情報事業の推進
(1)情報提供推進事業
Ⅳ.その他農業委員会ネットワーク業務の実施に関し必要な事項
1.他の農業委員会ネットワーク機構との連携
他の農業委員会ネットワーク機構と密接に連携することを通じて、農業委員会ネットワーク業務の適正かつ効率的な推進を図る。
2.関係機関・団体等との連携
沖縄県農地中間管理機構など関係機関・団体との密接な連携・協力の下、農業委員会ネットワーク業務の円滑な推進を図る。